教員はつらいよ

 大阪の小学校教員数名が、職務中に喫煙を繰り返しているという通報を受け、停職処分を受けたという記事を読みました。そして、ああ、この教員は俺だ、と思いました。


 彼等は(私は)、受動喫煙は犯罪だ、憎き喫煙者を排除せよ、とヒステリックに叫ぶ潔癖症の正義の味方共が、その数の優位を利用して作り上げた条例と言う名の命令に、到底納得出来なかったのです。当然です。不寛容があらゆる争いの根底にあることを知り、自らが寛容であろうとする教員として、問答無用の喫煙文化、嗜好の自由の圧殺を看過するわけにはいかないのですから。その軽薄な判断を一歩身を引いて眺めると、大阪府のしていることはレイシズムの不寛容とほとんど重なって見えます。


 タバコをやらない人が、煙が不快だと感じる気持ちは分かります。他人の吐いた煙を吸わされて健康被害が生じる事実があることも分かります。しかし、そのために喫煙を全否定することが許されるなら、世の中は却って息苦しくなり、薄暗くなることでしょう。レイシズムなどと軽く口にしたつもりはありません。そこは細かく例を引きませんが、思い出せばきりがない前例が山とあります。


 もしも、世界に、本当に排除すべきものがあるのだとすれば、それは己の中にこそあるのではないでしょうか。異文化の者とも、異教徒の人とも、主義の異なる人とも、立場の異なる人とも、犯罪者とも、偽善者とも、異常者とも、変態とも、病人とも、嘘つきとも、金の亡者とも、酔っぱらいとも、かっぱらいとも、タバコを吸う教員とも、同じ変わらぬ自分で向き合えぬのなら、それはきっと、全人生をもって取り組むべき課題なのでしょう。


 娘が小学校に通っていた頃、学校行事に顔を出すたびに心の中で密かに思ったことがあります。先生、そんなにイライラして子供に接しないでくれよ。タバコ吸ってさ、ちょっとリラックスしたらどうだい。子供達もさ、煙で先生の顔を見なくて済むだろって。いや、実際、小学校の先生は大変なんです。その娘が今では、ずっと希望していた小学校教員になっているんですが、月の残業100時間近いんです。でも、残業代は数万円しか出ない。何時間残業したところで初めから決まってるんです。ちゃんと出したら、国庫パンクしちゃいますから。もう完全にブラックでしょ。オールブラックスもびっくりでしょ。そんな中で頑張っている先生方がですよ、ちょっとジュース飲んだり、飴舐めたり、ブラックブラックブラックガム噛んだり、昆布噛じったり、野良猫撫でたり、うたた寝したり、雑談したり、子供から没収したコロコロコミック読んだり、鼻歌うたったり、超つまらないオヤジギャグ飛ばしたり、愛妻弁当残して捨てたり、愛人にラインしたり、学校の敷地外で一服したり、授業中におならしたり、それを掴みッペして子供に嗅がせたり、そういうことをそれぞれの嗜好に合わせてすることを禁止するって、まあ、人間味の欠片も感じません。ストレスためて教育をぶっ壊せと言ってるようなもんだと私は思います。真剣に。


 あと、私が読んだ記事の中で、ある教員は、在宅ワーク中での喫煙回数なども調べられ、その回数が千何百回とかありましたけど、もうここまでやるのはどっちが犯罪なのか病気なのか条例違反なのか、笑うしかありません。


 あなた、トイレの中で鼻糞ほじったでしょ? ほじってないよ。嘘おっしゃい、ほじったでしょ? ほじってないって。証拠は? 証拠? はは、お前ね、トイレの中で俺が何をしょうと、俺の勝手だろ? 私も使うんです、その中で鼻糞はほじってほしくないから言ってるんです。じゃあ、どこでほじるんだよ! どこでじゃなくて、鼻糞はほじっちゃだめなの! じゃあ、鼻糞がたまったらどうすんだよ! トイレでほじるしかないだろ! ほら、やっぱりほじってるじゃない! ほじったよ、ずっとほじってるよ! 結婚してから毎日ほじってるし、これからもほじり続けるよ! (妻、泣く)ああ、ごめん。ちょっと言い過ぎたよ。(夫、妻の頬に手を伸ばすが)触らないで! 鼻糞をほじった手で! あ、ごめん…。これからは、もうほじらないよ。あ…。何よ? はは、お前、鏡見てみろよ。何よ、鏡って…。いいから、見てみろって。(妻、立ち上がり鏡を覗き込むと、鼻の穴から鼻糞が飛び出しているのに気が付き、慌てて鼻糞をほじりとる)あっ、きたねぇ、鼻糞ほじった! だって…ふふ、ええ、ほじりましたよ。俺はトイレの中でほじったけど、お前は人前でほじったぞ! 最低だな! ふふ、ちょっと、ティッシュ取ってよ。嫌だよ、自分で取れよ。意地悪ね! もう、付けちゃうわよ。(夫、逃げる。妻、追う。寝ていた猫も走り回る。幕。)



 かくいう私は、禁煙歴10年のリターン喫煙者ではあります。が、そのうちやめるのかなぁなどと思うこともないわけではありません。しかし、それは身体の健康とはまるで無関係な理由でして、その話はまた別の機会にするかもしれませんし、しないかもしれません。私にとっては、まあ、好きなバイクもタバコもボクシングも文学も、どれも似たようなものだということであります。無理矢理奪われるとなれば抵抗しますが、自分の意志に依るなら、どれも案外あっさり手放してしまうのでしょう。




件の娘に逆プレゼントしました。父の日に(笑)

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